小さな恋 大きな恋

01


「国光ーちょっと来なさいー。」
ある日国光が部屋で本を読んでいると1階から母の呼ぶ声がしたので下に降りてみると玄関の方が何やら騒がしか
った。
「なんですか、母さん。」
国光が不思議に思って玄関で話し込んでいる母へと声をかけた。
「ああ、国光来たわね。母さんと父さんの親友の越前さんよ。」
「よぉ!越前南次郎だ、こっちが嫁の倫子と娘のリョーマだ。よろしくな!」
「手塚国光です。」
母の彩菜が話していた相手にあいさつされたので国光もあいさつを返すと今度は倫子が話し掛けてきた。
「国光君今いくつ?」
「9歳です。」
「じゃあ、うちのリョーマと同い年ね。よかったわねリョーマ、同い年ですって。」
「うん。よろしくね、国光。越前リョーマだよ。」
そう言って握手を求める手を出したのは倫子の隣にいた南次郎と倫子の娘であるリョーマだった。そんなリョーマに国
光は少しびっくりしたがリョーマの手を握り返した。
「こちらこそよろしく。」
国光がそう言うとリョーマはニコッと花のように笑った。その笑顔に国光は思わず赤面してしまったのだった。そんな2
人を3人は微笑ましく見ていると突然リョーマが
「私、国光のお部屋見てみたい!」
と言い出したので、2人は自分たちの親をそこに残し仲良く手をつないで国光の部屋へと向かって行った。そこに残さ
れた親たちはとりあえず玄関からあがりリビングへと場所をうつして話の続きをした。
「それにしてもリョーマちゃん、かわいいわ〜vvv」
「国光君のかっこいいわvv」
「あいつは将来男前になるぞ。しっかし、父親に似てねぇなぁ〜。」
「国光はお祖父さん似よ。」
「そうね、国一さんそっくりだわ。」
「じいさんかぁ・・・。堅そうだな・・・」
「リョーマちゃんは将来美人さんになるでしょうね。今でも充分美人さんだもの。」
「そう?嬉しいわ。将来の国光君のお嫁さんなんかどうかしら?」
「あら、いいわねぇvvv」
「国光にだったらリョーマをやってもいいな。」
「でしょ?そしたら、私達親戚になるわねvvv」
「ほんと!今もいい感じだし。」
「そういえば国光君、テニスやるんですって?」
「ええ。」
「リョーマもなんだよ。」
「えっ?そうなの?いいじゃない!」
「そうなんだけどね・・・」
「?どうしたの?」
「実は・・・」

ドタドタドタ

倫子が彩菜に説明しようとしたとき、いきなりすごい勢いで階段を駆け下りる音がしたので3人は何事かと階段の方
を見ると、国光がリョーマを抱えて降りてきた。
「か、母さん!倫子さん!南次郎さん!リ、リョーマがっ!!!」
国光の腕の中にいるリョーマを見るととても苦しそうにしていた。
「あら、あら。国光君、リョーマをもらえるかしら。」
「はい。」
倫子は国光からリョーマを受け取ると彩菜に水を頼み、かばんの中から薬を取り出してリョーマに飲ませた。すると、
リョーマは落ち着いたのか倫子の腕の中で眠ってしまった。
「落ち着いたみたいね。」
「ちょっと、倫子!南次郎!どういうこと?」
彩菜があせったように倫子と南次郎に問い詰めた。2人はお互いの顔を見合わせてから話し出した。
「国光君も座って、2人には話しておこうと思って今日は来たの。」
「実は、リョーマは生まれた時から体が弱いんだ。興奮したり激しい運動をしたりすると咳が出てから苦しみだしたり
するんだ。国光、リョーマが苦しみだす前に興奮してなかったか?」
「はい。部屋に行ってからリョーマに学校のことを話してと言われたので、話してたのですが、興奮気味に聞いてまし
た。しばらく話していると急にリョーマが咳こんで、苦しみだしたんです。」
「そうか、すまなかったな国光。先に言っておくべきだった。慌てただろう。」
「少しあせりましたけど、とりあえず下に連れて行こうと思い連れてきました。」
「あなたの判断は正しかったわ。ありがとう国光君。」
「いえ。」
「症状は咳がでて苦しむだけなの?」
「あと、よく熱をだすわ。」
「そう、大変ね。でも、テニスしていいの?」
「あまり激しく動きまわらなければね。体力をつけさせるためにはじめさしたんだけど」
「こいつは負けず嫌いでな。すぐ本気になるんだ。」
「でも、そのお陰でだいぶ体力がついたみたい。昔は毎日のように熱を出してたのよ。」
「よかったじゃない。」
そんな時倫子の腕の中にいたリョーマが目を覚ました。
「ん〜。」
「あら、リョーマ目覚めたの?大丈夫?」
「う〜ん・・・。大丈夫。」
「よかったわ。じゃあ、そろそろ帰りましょうか。」
「えっ!もう帰るの?!」
「お前倒れたじゃねぇか。」
「ヤダ!もっと国光と遊びたい!!」
「リョーマ、また明日会えるじゃない。」
「ほんと?」
「ええ。明日からリョーマも国光君と同じ学校に通うのよ。」
「やったー!」
「じゃ、帰るか。彩菜、国光、これからもよろしく頼むぜ。」
「ええ、任せてちょうだい。」
「国光君、学校でリョーマのことお願いできるかしら?」
「はい。」
「ありがとう。」
「リョーマ、国光はテニスをするらしいぜ。」
「ほんと?!国光!今度私としようね!!」
「えっ!でも・・・。」
国光はリョーマに言われた言葉にどう返答してよいかわからなかった。たったいまリョーマは激しい運動をしたら咳が
でて苦しくなると説明されたばかりなのだ。国光が南次郎の方を向くと南次郎はうなずいてこう言った。
「国光、リョーマの相手をしてやってくれるか?1ゲームぐらいなら大丈夫だ。」
その言葉を聞いて国光は安心した。
「わかりました。じゃあ、リョーマまた今度しよう。」
「ありがとう国光!!」
「よし!帰るぞリョーマ。」
「うん!!」
「お邪魔しました。」
「また、いつでも来てちょうだいね。」
「バイバイ国光!また明日会おうね〜」
「ああ。」
そして、越前家は自宅へと帰っていった。




その日の晩、国光はまた明日リョーマに会えることに心を躍らせ、眠りについたのだった。